参加型授業研究会の方法
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研究授業 事後検討会
◆◆ 事前準備 ◆◆
◇ 研究授業における問題意識の明確化 ◇
 研究授業の立案にあたって,何を研究上の問題と位置づけるのかを明確にします。研究のために,あえて問題を作り出す必要はありません。むしろ普段から気になっている子どもの様子や,授業者として実現したい実践の姿など,日常の教育実践の延長線上に問題を設定することが大切です。日々の実践の中で漠然と思っていることや,日頃気になっていても,じっくりと考える機会のないことなどを,集中的に検討する機会として,授業研究会を捉えてみるのがよいでしょう。
 問題意識を明確にするとは,漠然と頭の中に思い描くだけでなく,ことばなどを用いて,他者にわかるように表現するということです。  
  • 「こうなって,ほしい」  ・・・・・・・・・児童・生徒への願い  
  • 「ここまでは,なんとかしたい」 ・・・・・・授業者として実現したいこと  
  • 「そのために,こうしてみよう」 ・・・・・・手だてや働きかけ
    ◇ 単元の構想、授業案、座席表の作成 ◇
     研究授業における問題意識をふまえて,単元を構想し,具体的に授業の計画案を練り上げます。児童・生徒への願い,授業者として実現したいこと,手だてや働きかけが,授業の計画に反映していることが重要です。
     研究授業当日に参加者に配布する授業案には,学級の様子,授業者の問題意識,本授業における授業者が特に力を入れた点などが,できるだけ伝わるように,具体的に記述します。さらに,次の項目で説明する抽出児童・生徒に関して,授業者がどのようにその子をとらえ,どのような願いをかけ,この授業の中でどのように働きかけをしようとしているかなどを,授業案の中に記述します。座席表には,授業者がとらえた児童・生徒の姿を短い文や略号などを用いて書き込んでおくと,参加者が授業を観察する上で参考になります。なお,深く授業を検討するためには,一定程度詳細な資料が準備される必要がありますが,参加者が限られた時間の中で,授業案を読んで理解できるよう,分量や記述方法には配慮が必要です。
    ◇ 抽出児童・生徒(3名程度)の決定 ◇
     授業研究会における観察や討議が散漫にならないよう,特に集中して観察・記録を行う児童・生徒を,3名程度選びます。抽出児童・生徒それぞれに対して,授業者がどのようにその子をとらえ,どのような願いをかけ,この授業の中でどのように働きかけをしようとしているかを,明確にします。これらの点が,参加者の観察時の視点や,事後検討会での論点となっていきます。参加型授業研究会を実りあるものにするためには,授業者が今回の研究授業の中で,抽出児童・生徒に対してどのように関わろうとしているかを明確にし,参加者がそれを理解した上で協同することが,きわめて大切です。
    ◇ 司会、観察者の役割分担の決定 ◇
     授業研究会の運営のために,司会,観察者などの役割分担を決めておきます。観察・記録のために分担すべき役割の内容については,次のセクションの「研究授業」で述べます。
    ◇ 授業準備(教材、学習環境等) ◇
     通常の授業と同じように,教材,学習環境など,授業の準備を行います。特に研究授業のために,以下の点に注意します。教室内に入る参加者によって,授業の雰囲気はいつもと違ったものになりますが,それでも児童・生徒ができるだけ落ちついて学習できる環境に配慮することが大切です。それとともに,抽出児童・生徒の観察者,速記録者,記録用機材などのために,教室内に適切な場所を確保することも,あらかじめ考えておく必要があります。
    ◇ 事前ミーティング ◇
     研究授業を実施するにあたり,今回の研究授業における問題意識,すなわち研究授業のねらいについて,参加者に説明します。参加者は,それを十分理解し,尊重して,授業の観察や討議にのぞみます。授業観察や討議においては,参加者の独自の視点や考え方も重要ですが,まずは授業者の意図を共感的に理解することが,授業研究において協同するための出発点です。
  • 事前準備 事後検討会
    ◆◆研究授業 ◆◆
    ◇ 速記録(2名) ◇
     研究授業の速記録を作成します。2名程度の分担が望ましいでしょう。時刻,発言者,発言・行動の概略を時系列にそって記述します。速記録は,事後検討会での討議のベースになります。
    ◇ 抽出児童・生徒の観察(児童・生徒1名につき1から2名) ◇
     抽出児童・生徒を集中的に記録します。抽出児童・生徒の様子を,時刻とともに具体的に記述します。
    ◇ 全体観察 ◇
     その他の参加者は,授業者のねらい・意図,抽出児童・生徒を考慮しながら,全体を観察します。速記録者や抽出児童・生徒の観察者とは異なり,観察したことを網羅的に記述するのではなく,「おやっ?」と気持ちが動いたところを記述します。このとき,時刻も忘れずに記録しておきます。
    ◇ 音声記録,映像記録,写真 ◇
     機材を使った記録も,分担を決めて行います。これらの記録の活用は,直後の事後検討会では難しい場合が多いでしょうが,後に授業を詳細に分析する際には重要な資料となります。
    事前準備 研究授業
    ◆◆事後検討会 ◆◆
    ◇ 速記録の配布 ◇
     時刻,発言・行動の概要が書かれた速記録を,印刷して,参加者に配布します。
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    速記録の形式
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    ◇ 付箋紙の準備 ◇
     観察者は、観察した抽出児童・生徒の様子などを、時刻とともに付箋紙に記述します。観察中に直接記入しても、観察後に記録を整理しながら記入しても、どちらでもかまいません。
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    付箋紙の形式
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    ◇ 総合記録用紙の準備 ◇
     事後検討会では、速記録に、各参加者の気づきを、付箋紙で付け加えていくことによって、総合記録を作り上げていきます。
     あらかじめ,速記録のコピーを拡大した模造紙を準備します。この紙には,速記録のほか,抽出児童・生徒ごとに、付箋紙を貼る欄を、もうけておきます。また,その他の児童・生徒や全体の様子についての付箋紙を貼る欄も、もうけておきます。模造紙は、黒板・壁などに、参加者によく見えるように貼ります。通常、1授業で、数枚から10枚程度の模造紙になります。
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    総合記録の形式
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    ◇ 協同での総合記録づくり ◇
     参加者どうしで、観察・記録した事実や気づきを話し合いながら、付箋紙を貼付けていきます。そして、事実、問題を共有しながら、徐々に詳細な総合記録を作っていきます。さらに、総合記録から見えてくることを論点として、話し合いを深めていきます。
     いきなり網羅的に付箋紙を貼付けてしまうと、全体を理解するのが困難になり、話し合いのポイントがぼやけてしまうので、はじめは重要と思われるものにしぼることが大切です。たとえば、抽出児童の観察者にポイントとなる行動・発言に関する付箋紙を、最初に数枚ずつ挙げてもらい、そこから話し合いをスタートし、関連する事実や意見を出し合っていくという進め方もよいでしょう。
    事前準備 研究授業 事後検討会

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    名古屋大学大学院教育発達科学研究科
    「教育実践問題支援プロジェクト」
    (地域貢献特別支援事業)
    ntpep-office@educa.nagoya-u.ac.jp
    2005.01.11

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