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 社会心理学,文化心理学,コミュニケーション学が,研究分野です。

 キーワード:自他認知,言語使用と対人認知,異文化間葛藤,葛藤解決方略,行動科学 など

 日本語と英語,どちらも同等に話すことができるバイリンガルを想像してみて下さい。いずれの言語を用いても,自由に意思表示可能で,何の苦労もなく日常生活を営むことができます。しかし,彼らが送る“日常生活”は,日本語社会で過ごす時と,英語社会で過ごす時とで一緒でしょうか?文法の違いもさることながら,文化的な要因だけを考えても,バイリンガルがそれぞれの言語環境で送る“日常”には差があっても不思議ではありません。

 また,自分が属する文化ではない文化(異文化)圏の人と交わすコミュニケーションは,近年のわが国では非常にありがたいものとしてとらえられている風潮が見受けられますが,本当にありがたいものなのでしょうか?数多の事象同様に,異文化コミュニケーションにも陰陽があることを忘れてはいないでしょうか。異文化コミュニケーションが人の成長や,心理的状態に及ぼす影響は決して小さいものではありません。科学者として,素晴らしい側面を強調することも大切な職務であると痛感していますが,裏の側面,言うなれば“the dark side of intercultural communication”についての知見がもっと提供されていてもおかしくないのではないかと切実に感じています。

 上のような話しは,何も異文化圏に出なければ出くわさない話ではありません。例えば,最も身近な例では,方言話者に対する印象評定が考えられます。方言話者はどのように認知されるのでしょうか。名古屋弁を話す人が,東京の企業で面接を受ける時に名古屋弁で話すと,採用の確率に影響するでしょうか・・・?(もっとも,採用されるだけの資質が認められていた前提は必要となりますが・・・)。東京出身者が,関西の企業に就職する際に東京のことばで話すと,採否に影響するでしょうか?なぜ,関西出身のコメディアンが多いのでしょうか。これらの問いに対する答えの多くは,コミュニケーションや社会心理学的な研究から示唆されています。

 これらは,ことばと人との関係,そして“ことば”が象徴する対象である“文化”が人の生活や人生に及ぼす影響の一部の例です。

 更に“文化”が私達に影響している,より厳密には,日本の研究者に対して影響をもたらしている側面もあります。すなわち,欧米で行われた研究成果の“直輸入”です。近年,心理学は飛躍的に進展していますが,背景には欧米における生産的な研究成果の積み重ねがあることは否めません。しかし,前述のように,ことばも文化も違う地域で検証された理論を,そのまま日本文化の枠組みに適用して,日本人や日本文化の問題を説明しようとすることが果たしてどれだけ正しいことだと言えるでしょうか。50%でしょうか?もっと低いのではないでしょうか。

 本研究室では,単純に欧米で算出された理論であるからといって,日本文化に適用するのではなく,西洋文化圏からは見えない,東洋文化,日本文化独特の背景を大切にしながら,新しい発見を目指して研究しています。

・ 高井次郎・田中共子・横田雅弘 (1997). 「対話場面の分析による文化理解の測定」 『日本語の習得と文化理解』,47-149.

・ 高井次郎 (1998). 「カナダにおける職業訓練プログラムーSchool-to-work transition projectについて」 『学校と地域社会との連携に関する国際比較研究ー中間報告集3』,55-60.

・ Takai, J. (1998). Accounting for culture in a model of interpersonal communication competence. Journal of Humanities and Social Sciences, 3, 223-258.

・ 高井次郎 (1998). 「日本的対人コミュニケーションを追究する」 ,『日本コミュニケーション研究者会議プロシーディングス』,8,111-140.

・ Takai, J. (1999). Extracting the "culture" from Japanese student samples in cross-cultural communication research. Journal of Humanities and Social Sciences, 4, 79-111.

・ Tasaki, K. & Takai, J. (1999). The effects of self-construals on influenceability. Journal of Humanities and Social Sciences, 6, 189-201.

・ Ota, H., Harwood, J., Williams, A., & Takai, J. (2000). A cross-cultural analysis of age identity in Japan and the United States. Journal of Multilingual and Multicultural Development, 21, 33-41.

・ Oetzel, J., Ting-Toomey, S., Matsumoto, T., Yokoichi, Y., Pan, X., Takai, J., and Wilcox, R. (2001). Face and facework in conflict: A cross-cultural comparison of China, Germany, Japan, and the United States. Communication Monographs, 68, 235-258.

・ Oetzel, J., Ting-Toomey, S., Yokoichi, Y., Matsumoto, T., & Takai, J. (2001). A typology of facework behaviors in conflicts with best friends and relative strangers. Communication Quarterly, 2, 397-419.

・ Takai, J. (2001). Direct and indirect communication strategies: An overview of research from a cross-cultural perspective. Academia (Literature and Language), 69, 259-279.

・ 高井次郎 (2003) 「依頼および断りの状況における直接的・間接的対人方略の地域比較」,『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要(心理発達科学),49,181-190.

・ Takai, J. (2003) Current trends of intercultural communication research in Japan. The Annual Report of Educational Psychology in Japan, 42, 240-254.

・ 高井次郎・阿曽沼明裕・松岡靖・村上隆 (2005) 「アメリカ合衆国における入学者選抜関連機関の機能と役割」,『大学入試研究ジャーナル』15,7−12。

・ Igarashi, T., Takai, J., & Yoshida, T. (2005). Gender differences in social network development via mobile phone text messages: A longitudinal study. Journal of Social and Personal Relationships, 22, 691-713.

・ 森泉哲・高井次郎 (2006). 対人コミュニケーション場面における自己主張性方略の規定因―対人関係と自他意識の観点から,『ヒューマン・コミュニケーション研究』,34,95-117.

日本社会心理学会,日本グループ・ダイナミックス学会,日本コミュニケーション学会,異文化教育学会,経営行動学会,National Communicaiton Association, Japan-U.S. Communication Association など

・ 日本社会心理学会常任理事(事務局担当)2005年4月―2007年3月

・ 日本グループダイナミックス学会理事2003年3月―2007年3月

・ 経営行動科学会編集委員2002年10月−2006年10月

・ 日本コミュニケーション学会理事1994年6月1998年5月、2002年6月―現在に至る
・ 〃中部支部副支部長1994年6月1996年5月
・ 〃 中部支部支部長1996年6月1998年5月
・ 〃中部支部副支部長1998年6月2000年6月
・ 〃編集委員2002年6月―2006年6月
・ 〃学術副局長2002年6月―2006年6月

・ 異文化間教育学会理事1999年4月2005年4月
・ 〃編集委員2000年5月―2003年5月
・ 〃研究委員2003年5月―2005年4月

・ プシコロジア会編集委員2003年4月−

・ Japan-US Communication Association理事(広報担当)2004年11月−2005年11月
・ 〃副会長 2005年11月―2007年11月
・ 〃会長 2007年11月

・ その他,本務校内各種委員

・ 1994年6月 日本コミュニケーション学会第1回学会最優秀論文賞受賞

・ 2000年6月 International Communication Association Top Paper Award(米国国際コミュニケーション学会最優秀発表論文賞受賞)

・ 2000年11月 National Communication Association Top Paper Award (全米コミュニケーション学会優秀発表論文賞、3位および4位入賞)

・ 2005年11月 National Communication Association, Japan-US Communication Association Top Paper Award (日米コミュニケーション学会優秀発表論文賞)

・ 2006年11月 National Communication Association, Japan-US Communication Association Top Paper Award (日米コミュニケーション学会優秀発表論文賞)

・ 2007年08月 Japan Society for Natural Disaster Science "The Excellent Presentation Award" (Unagami, T., Motoyoshi, T., Takai, J., & Yoshida, T.)

・ 2007年11月 National Communication Association, Japan-US Communication Association Top Paper Award (日米コミュニケーション学会優秀発表論文賞)

 色々な役職を抱えているにも関わらず,研究室へ行くと常に相談に応じて下さいます。ご家族をとても大切にされる先生ですが,研究相談などに行くと遅くまで残って相談に応じて下さいます。研究については厳しい面もありますが,とても優しく,責任感の強い先生です。

 ご自身が,カナダで生活されていた経験を活かしながら,社会心理学,文化心理学,異文化・対人コミュニケーション論をとても面白く教えて下さいます。ご多忙中であっても,指導生のことをとても気にかけて下さり,不安なときはいつも背中を押して下さいます。とても暖かい先生であると同時に,尊敬する研究者でもあります。異文化間コミュニケーションや,異文化交流についての見解は,非常に説得力と確証に満ちた説明をして下さいます。

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