専門領域について
Ｑ どのようなきっかけでこの学問を始めたのですか？
本来は中学校の英語の教師になるつもりだった。しかし、大学４年生の夏休みをはさんで２カ月ほどアメリカに旅行する機会があり、そのため教員採用試験が受けられなかった。これを機に、将来アメリカに留学できるチャンスを見つけたいと思い、アメリカと教育学を結びつけるテーマを探して、ジョン・デューイの教育理論の研究を選んだ。このテーマの選択も、今から考えると偶然の結果という気がする。しかし、今では自分の考え方の枠組みに大きな影響を与えていることを考えると、研究テーマの決定は大切なものだと思う。
現在の研究について
Ｑ 現在の主要な研究の内容を教えてください
最近では、アメリカにおけるケアリングの理論や越境教授学などの研究に取り組むかたわら、わが国の人間形成のあり方についてあれこれと考えている。これからは、わが国の人間形成や人間学の伝統についてさらに研究することによって、今後の教育や人間形成のあり方について考えていきたい。
Ｑ 今までの研究で一番心に残っている出来事、ハプニングを教えてください
アメリカに留学中、博士論文を書いていて、論文作成も最終段階に近づいてきた時、指導教官に「これではダメだ」と言われてショックを受けたこと。ほぼ書き終えた原稿を指導教授に見てもらい評価を聞いたところ、ノーといわれ、あまりのショックに呆然としてしまった。この問題についても話せば長くなるが、結果的には、他の教授や留学生アドバイザーの理解と援助により、指導教授を変更することで解決した。このとき経験したアメリカの大学教授の理解ある態度や、さらには教育システムの柔軟性とを、いつまでも忘れることなく、自分の教師生活にも生かしていきたい。
講義について
Ｑ 授業のねらい、背景を教えてください
「人間形成学II─学問の探究と人間形成─」について
この授業では、いまや新聞やテレビで話題になっている大学問題を中心に、われわれを取りまく教育改革の状況や若者のおかれている状況を考えることをねらいとした。授業をしながら、「こんな風に日本の大学は変わっていくんだ」と自分にいい聞かせながら話していたような気がする。最近の大学をめぐる変化の影響は、教師だけでなく、いずれ学生にも及ぶだろうと感じた。これからも大学問題について学生とともに考えるため、このような授業を継続していきたい。
学生へのメッセージ
Ｑ 求められる学生像を教えてください、またその他なんでも結構です。
名大の学生は、さまざまなことを自分で対処していく力をもっている。したがって、これ以上のことはそれほど要求しようとは思わない。
あえて学部生に対して望みたいことといえば、外国留学・旅行でもいいし、コンピュータの勉強でもいいから、自分が没頭できうるものを見つけて、思い出に残るような経験をして、卒業していってもらいたいということです。４年間で一つでもいいから、思い出に残るもの創って下さい。
指導生からひとこと
早川先生は、ジョン・デューイを中心とした米国の教育哲学を研究なさっています。デューイが繰り返し主張したように、コミュニケーションを非常に大切にされる先生です。笑顔の絶えない日はないでしょう。このことは大学院生の研究指導にもあらわれていて、あたたかく的確に助言してくださいます。ゼミではいつも活発な議論が交わされますから、毎回自分自身が成長していくことを実感できるでしょう。